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●前日走行

今回は練習走行にいける機会が多く、暖かさも手伝って私はワクワクしていた。
劣化が原因でシフトペダルは練習走行時に折れ、タンクにクラック(ヒビ)が入り、ガソリンが『ぴゅ〜っ』なんて出たがすぐ溶接を頼み、私はじわじわと近付くレースの日をいつになく『心待ち』にしていた。
レース前日に練習へ行く事となり、天気のいい岡山県・TI英田サーキットに着いた。
前の週やその5日前にも走行予約を取り走ったし、『私のホームコースはTIサーキットです!』とやっと声をたからかに言えそうだ。
一週間前の練習日はメカでアドバイザーを請負ってくれているNさんにコーナーリングを見てもらい、そして今日はその復習が出来ているかのチェックをしてもらう。
私の仲間内では『スパルタ』で有名なNさん。どんな言葉攻めが待っているか…。と心配しつつ、一枠目の走行開始!
天気も良くツーリングには最適な日和の中、Nさんの鋭い視線でバイクがよろけてしまいそうだった。
1枠目は自分的には「まずまず」な感じだったが、ピットに戻りマシンのスタンドを立ててる私に近付きNさんは
「あとでお説教な。取りあえず次の枠までツナギ脱いで書くもん書いとき!」
………。 まるで『ガチンコ バリバリ伝説』!
Nさんは私の苦手コーナーを一発で見抜き、良く当る占
い師の様にズバズバ痛いところを指摘、そして説教の間に何回も「遅い!」を連呼した…。
「先週いうたこと書いてるか?ノートいっぺん見してみ」と言われおずおず差し出したノートに目を通し、指摘をいただいた。
「コースの中ではモノ考えて走んな。今考えるんや!」と言われた。
へこんでる時間はない。 何回もノートを読み、不出来ながらもイメージトレーニングで頭の中のコースを走る。
2枠目コースイン。言われた事を思い出し、身体に覚えさせるように走った。 ピットに戻って早速「どうかな〜?」←結構タメ口なワタシ。
Nさん「あとで話しするわ」と先延ばし。
『ワタシまたヤバい??』
練習に来てた連れに「どうやった?今度は」と聞かれても「わから〜ん、また後で言うって言われちゃったよ〜!またお説教かなあ」と言うと連れは「そっか〜…」と私に同情の視線を送る。
しばらくして練習の感想を聞く私にNさんは「2枠目か?良かったんちゃう?先週とは見違えるくらい良くなったで。ほめとくわ」と!
やたら『後回し』にされたけど晩の買出しの車の中で見たキレ−な夕日に気持ちよくて、明日が早く来ないかなとウキウキした。

 

●レース当日

朝5:30にセットしたアラームが鳴ると、私は飛び起きて車の窓から外を見た。「降水確率が高い」と前の晩ご飯をお供させていただいた他のチームの人がしきりに話していて、私も気が気ではなかったからだ。
MH80クラスは元々ブリジストン社のグリップの悪い(レースには向かないという意味の)タイヤのワンメイク(それ以外は使っちゃダメ!)なもんで、雨が降ったからといって『レインタイヤ』など履けない。 雨は一波瀾を起こすには充分過ぎる。
「昼まで降らないで」
しかし思いも空しく6:00からぽつぽつときた。
7:00になるとサーキット内にあるタイヤサービスには、レインタイヤの購入&交換のための行列が出来はじめる。
8:00からの予選に際して私はめちゃネガティブになっていた。
『雨は大の苦手』だから。
せっかく昨日考えた作戦が台なしになりブルーになっていた。 でも降り注ぐ雨はホントの意味で『イコールコンディション』
何とか気を取り直してマシンをウエイティングエリアに並べ、予選スタート!
ホントによく滑る。まるで『中華屋さんの床』。油でギトギトのところを歩いてるようで全くグリップしてる感覚はない。 曇るシールドに遮られる視界の中、もんどりうって転ぶライダー達。 つい「お金払ってまでこんなことしてる私らって」と考えたら、またタイヤがにゅるっと流れる。
雨の日のコーナーリングで私は『中国雑技団乗り』をNさんに習った。
まあ本当の名前は「リ−ンアウト」らしいが、身体の小さな私はもちろん手足も短い。だからお馴染みの「リ−ンアウト」でも超かっこ悪く効果も薄い。だから『今、曲乗りをしてるんだ!』と言う意識でオーバーにしている。しかしとても格好悪い。
もし友達に望遠なんかで写真撮られたら、あわてふためくだろうな。
何とか予選終了。タイムは9/11番手。
みんなタイムは近いとはいえ、余りにも遅い。反省…。
でも決勝にかけよう!!ウォークマンのボリュームを上げ、EUROでテンションを上げる。

決勝までの間にトラブル発生!
『ピストンにヒビが入っている!』
そう聞かされたのはレース30分前。 作業はすでに完了していて、決勝には響かなかったが割れたピストンを見せてもらったら恐かった。
メカさんいわく、朝エンジンかかりにくかったから予選終了後、ピストン見てみたら割れてたのだそうだ。
素人ならたぶんそのまま決勝まで出てたでしょう。で、本当にエンジンがぶっ壊れてしまうだろう。 感謝!

決勝のスターティンググリッドは6列目。
私の周りはなぜか10代ボーイばかりが固まっていた。 「う〜む、しかしみんな『タイヤウォーマー』でタイヤを熱くして並んでいるが、私はウォーマーは持ってな〜い!でも悔しくないもんねっ!プンッ!しかしあれってそんなに熱くなんのかな〜?すごく効果あるんかな〜?湯気とか立っちゃったりして。どれどれ?」
なんて人のタイヤばかり気にしていたら、いままで無難にこなしてた『スタート』をしくじってしまった!
すぐに挽回できず1コーナーはドン2で入り、どしゃぶりにに変わったサーキットをややあわて気味に走り出した。

2周目から前を走るライダー達に近付いている気がして、少しアクセルを開けてみる。
滑る。また少しペースを戻す。でもやっぱりあれは抜ける!っていうか抜かないとだめなんだけどね、レースだから。
何回も前のライダーは振り向く。そんな無駄なことしてるからとうとう私はそのライダーを射程距離に入れた。「どうやって抜こうか…インはさすがに入れないし、アウトはこのコがこけてしまった場合巻き添えくらう可能性があるしなあ。かといって直線はどうかな?こっちのが速ければ…あれ?直線このコよか全然速いやん!」というわけで裏ストレートでスリップを使う間もなく1台抜いた。
少し離れた位置にもう一台いたが、さすがに時間切れ!
チェッカーフラッグ!

こけないで完走できた。 私はそのことがとても嬉しくて、順位はあまり気にしてなかった。 定員われみたいな第1戦より、5台も多い今回のレースではせいぜい8位がいいとこだと思っていたから。でも実際たくさんのライダーが転倒して、リタイヤしてたのは知っていた。
しかし「S80」と混走してるこのレースで、リタイヤしてコース外にいるマシンがMH80なのかS80なのかは、パッと見では(私は!)わからない。
ピットロードを経てピットまで行くとメカさんが暫定表彰を受けるところにいて、入賞マシンを並べろとオフィシャルからも指示を受ける。

「お前、5位やで!」
Nさんに肩をたたかれ、やっとホッして笑えた。
「そうかあ〜良かったこけずに粘れて」 なんか我慢大会みたいなレースだった。
不細工なライディングに我慢して、滑りに我慢して、興奮し抜きたい欲望に対しても私なりに冷静に対処出来たと思う。
私は頭に『カ〜ッ!!』っと血が登ったらもう冷静なんて戻れないたちだから。 びびってるのでなく、落ち着いていたな〜と振り返った。
表彰式では『僕、初めてのお立ち台なんです』と言う4位のライダーと笑顔で話したりした。
今回はほんとに頑張れたと思う。初めて冷静になれたのもメカのNさんのアドバイスと内容の濃い練習だと私は思う。
前戦とはまた違う気持ちで拍手を浴び、ここに上がれた事を心から嬉しく思った。

次回 TIロードレース選手権は6月3日です。

 

 

 

 

 

 

 

 


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